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「成功が成功を生む」元代表コーチが唱えるウエイトトレーニングの基本

「成功が成功を生む」元代表コーチが唱えるウエイトトレーニングの基本

 

 今回は、元ラグビー日本代表ストレングスコーチを務め、現在は早稲田大学ラグビー部のハイパフォーマンスコーディネーターとしてご活躍されている村上貴弘さんにインタビューをさせて頂きました。前回の前編では、部門を越えたコーチの連携の重要性について、今回の後編では実際に体をどう強くし整えていくかについて伺いました。

 

ウエイトトレーニングで一番大切なこととは?

—— まずそもそも、重りを使った筋力トレーニングはいつ始めるのがよいのでしょうか?

第二次性徴期が終わった後は、ウエイトトレーニングをして良い時期だと言われています。というのも、実はそもそもその前は筋力トレーニングをしても筋力はついても筋肉はしっかりつかないんです。むしろ関節などに悪い影響を与えてしまいます。

ただ、自分の体重を支えられない選手はウエイトトレーニングはできないので、腕立て伏せやスクワットのような自体重のトレーニングはできる段階から開始して良いと思います。

 

—— ジャパンを経験された村上さんご自身のコーチングのモットーや哲学はありますか?

選手の体の使い方にはすごく気を遣っています。例えばベンチプレスを例に挙げると、肩甲骨を下げて寄せ、脇がしまった状態で押し出すんですね。ただこれは意外と難しくて、例えば肩甲骨を寄せて手を前に出すと、肩が前に出て関節を痛めることになるんです。

 

要するに、よく言われることですが正しいフォームでトレーニングしないと、むしろ体の使い方が悪くなってしまいますから、それは伝えたいですね。

—— 「成功が成功を生む」というのは例えばどんなことでしょうか?

 メンタル的な面では「成功が成功を生む」と考えています。

例えば、5回5セットでウエイトをやるとすると、普通の場合、1セット目で5回ギリギリ、2セット目で4回、3セット目で3回、という風に段々と補助する割合が上がっていくんですね。この中でフォームを意識するのは非常に難しい。

 

基本的に5回MAXの重さは自分の限界の約85%の重さなので、あえてそこを75%の重さで選手にやってもらうんです。そうすると選手は、「全然いけます」「これでいいんですか?」と言うんですね。

 

そこで私は、「それなら今度はフォームを意識してごらん」「バーをあげる速度を速くしてみよう」と声をかけるんです。自分が少し余裕を持って挙げることができる重さで実践してもらい、正しいフォームを覚えながら、筋肉を刺激していきます。
長期的にみるとこっちの方が効果があるんです。余裕があるからといって急激に重量をあげると、急にフォームが変わってしまいますし。

 

何より、そのスポーツで活用できる動きをウエイトトレーニングで強くすることが目的ですから、それを忘れないようにしています。言い換えれば、ウエイトトレーニングで正しい動き方を学んでいると。スキル学習であるという認識は必要だと思いますね。

 

—— ウエイトの記録に伸び悩む選手にはどうしますか?

 ウエイトトレーニングで重量の記録が伸びないことはよくあることですし、むしろリニアに(直線的に)記録が向上していく方が難しいですね。各スポーツの練習をしながらウエイトをすれば停滞期がくるのは当然なので、その時は少し見方を変えてあげます。

 

—— 具体的にはどんなことをしたり、どんな声をかけたりしますか?

 よくやるのは、5回ギリギリの重さが伸びない時には、同じ重さで3回を全力でやってみようと言います。「全力で」というのは、3回をできるだけ早いスピードで行うんです。最近では、バーに加速度計をつけて挙げた時の早さがフィードバックされるんですね。疲れすぎずに筋肉を刺激するということができます。

 

筋力アップがどの動作に対して活きるのかを考えることが大切です。難しい話ではあるけど、どこを鍛えたらラグビーの動きに活用できてパフォーマンスが上がるのかを考えなくては筋力トレーニングから得られる効果が薄れてしまいます。

 

—— つらいフィジカルメニューは特に選手のモチベーションが上げるのが難しいですよね。

 あと、ストレングスに関する内容については、できるだけ数値でフィードバックをしています。走れ!と抽象的に指示するのではなく、300mを何秒で走れと個人個人に目標を与えてあげています。


走るのってつらいじゃないですか。だから競争させるんです。人数も多いので50人とか一気に走るので、ビデオを撮るんです。そしてあとからビデオで各選手のタイムを計測し、次の同じランニングの時に、ボードに名前と前回のタイムを書くんです。選手一覧表と、300m、1000m、と種目ごとの平均タイムを算出しておきます。そしてそれをポイント制にして張り出すだけで選手は燃えますよ(笑)。

 

平均タイムを超えていない人は平均を目指し、平均を超えた人は自己ベストや同じポジションでの基準値を目指してもらいます。

 

そしておもしろいのが、さらにそのデータをスキルを教える、ストレングス以外のコーチにも渡すんです。そうすると、自分のポジションコーチに頑張れよと言われたら、選手は燃えますよね。

 

何より、S&Cコーチにメンバー選考の決定権はないので、直接的に選考するコーチに正確な情報を知ってもらうという意味では、すごく価値があることだと思います。これが、全然違うんですよ僕たちが言うのと(笑)。そういった意味でも部門間のつながりが重要(詳細は前編を参照)なんですよ。

 

——村上さんがウエイトを教える際に意識していることは何ですか?

「フィジカルのこと」と区切りすぎないことです。エディ監督も、ウエイトトレーニングのセッションにも全部顔を出していました。これはラグビーのためにやっているんだ、という雰囲気や環境を作り出すためです。選手からしたら最高のプレッシャーですよね(笑)。でもそれが大事なんです。

 

 今回のインタビュー記事では村上さんにウエイトトレーニングを始めるにあたりコーチに知っておいてほしい内容を発信しました。実際のトレーニングの方法に加えて、これに疲労度に応じた補強メニューの調整や、正しい栄養管理に関する知識がコーチには求められます。しかし、地道にウエイトで体作りをすると、長い目でみると、しない場合とは大きな差が生じます。
選手に正しい情報を与えながら、コツコツとチームの底力を上げていきましょう。

※この記事の前編はこちらです。

意外と知らない!元代表コーチが唱える連携の重要性

 

 

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