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Dr.大関の複眼インタビュー連載:ジャンパー膝【ドクター・宗田大さん】

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月刊スポーツメディスン・連載ハイライト
連載 Dr.大関の複眼インタビュー ――スポーツメディスン・プロフェッショナルとの対談3ー より引用・要約
協力:月刊スポーツメディスン編集部:編集工房ソシエタス
 
対談:宗田 大 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科運動器外科学教授
インタビュアー:大関信武 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事、東京医科歯科大学再生医療研究センター
企画:日本スポーツ医学検定機構

今回は、膝関節外科の第一人者、宗田先生にジャンパー膝が起こる仕組みと、対処法についてお話を伺いました。

 

ジャンパー膝を知る

 

――ジャンパー膝とは

 

大関:本日は膝関節外科のプロフェッショナルであり、バレーボール選手の診療経験の豊富な宗田大先生にジャンパー膝のお話を伺います(図1)。まず、「ジャンパー膝」という呼び方をするとき、どういうものを指していますか。

 

 

図1. ジャンパー膝(スポーツ医学検定公式テキストより引用)

 

 

宗田:ジャンパー膝は、ジャンプを繰り返すスポーツにおいて、膝のお皿周りが痛い、という症状群でよいと思います。膝蓋腱炎と診断する場合、膝蓋骨の付着部障害と考えているわけで、その病態は、膝蓋腱の近位の付着部が関節面側から徐々に傷み、断裂を生じてくる障害です。

 

ジャンパー膝の生じる要因

 

大関:局所で起きている変化は今述べていただいたことになりますが、その原因をたどると、大腿四頭筋のタイトネスや筋力などにあるのでしょうか?

 

宗田:臨床的にみると、バレーボール選手の場合は、わりあい身体がしなやかな人が多いです。ですので、四頭筋が弱い人が踏み込み動作の負荷を繰り返すことで、力学的に一番の弱点が徐々に傷んでくると考えられます。

 

野球選手やサッカー選手でもいないことはないですが、スポーツの競技特性もあって彼らの身体は硬い印象があります。また、バレーボール選手のように繊細に痛みを感じていないように思えますので、損傷が悪化してダメになるところまで使い、いよいよダメになってから病院に来るので、線維化が表に立っているようなことが多いようです。そういう人たちと、ジャンプをメインに繰り返す繊細なスポーツでは、臨床像としては異なると考えたほうがいいと思います。

 

大関:つまり、ジャンプ動作で膝関節にかかる力学的な負荷が、ランニング動作とは大きく異なるということですね。

 

宗田:はい、全然違います。そして、しなやか=弱いということで考えたほうがわかりやすいと思います。

 

 

ジャンパー膝の治療

 

大関:それでは治療についてお伺いします。治療ではどうされますか。

 

宗田:MRIが有用なのですが、MRIで異常を認めず肥厚はあるかなというくらいの例と、断裂はないけれど近位の付着部に高輝度を認める例、明らかに線維の断裂がある例と3つに分けて考える必要があると思います。

 

いわゆる膝蓋骨のストレッチ、膝蓋腱のストレッチは必要だと思います。それでよくなる人はよくなります。また、それにプラスで荷重のアンバランスに対してクッション性の問題を含め、足底板をつけるのがいいと思います。

 

「負荷」ということになると、クッションというのは非常に大事です。だいたい柔らかい人が多いですが、膝下で負荷をうまく吸収できることが必要です。バレーボール選手に限って言うと、とくに女子で足底板は非常に重要で、私の関与している選手の半数以上は足底板を装着しています。選手でいる限りは、ずっと作り直して着けていますから、よほど信頼性が高いのだと思います。

 

大関:足部や足関節における荷重に対するクッションが重要ということですね。

 

宗田:そう。あとは足の使い方のバランスということになります。扁平足の人が結構多く、足、足関節の部分での荷重吸収能力が弱いです。そういう人は足の機能を上げるために足底板というのは非常に重要だと思います。凹足の人もそうです。

 

あと明日や週末にプレーしなければいけない場合で症状を取りにいくのであれば、膝蓋腱の裏側にヒアルロン酸を注射すると効果はあります。1~2回で効果が十分な選手が多く、それ以上繰り返さなければいけない場合は部分断裂している人です。

 

大関:注射後は、先ほどのような片脚スクワットで痛みの具合をみますか。

 

宗田:はい、その場で痛みが改善しなければ、治療は失敗だと思っています。

 

大関:それくらい即時的な効果なんですね。

 

宗田:もちろんです。ハーフスクワットは、人によって角度が違いますが、90°のハーフスクワットが痛みなくできる、というのが1つの目標です。30°や45°くらいの間に痛みが出て、それ以上深くしゃがめないというのでは、プレーができないです。ですから、そこまで屈曲角度をもっていくのが、その場の診療として大事です。

 

 

成長期のスポーツ障害

 

 

大関:成長期の選手におけるオスグッド・シュラッター病では、同じ膝関節伸展機構のなかでは脛骨粗面に痛みが出ます。痛みの出る部位は成長が終わるとともに膝蓋骨周りに変わ ってくるのでしょうか。

 

 

図2. オスグッド病(スポーツ医学検定公式テキストより引用)

 

 

宗田:そのとおりだと思います。要するに伸展機構の過負荷なのです。オスグットで痛みが出るのは、その時期に力学的にそこが一番弱いということです(図2)。成長期は膝蓋腱の遠位の付着部、年が上がると痛みはもう少し上のほう、筋肉方向に移動する、という傾向です。個人差もありますが。

 

 

ジャンパー膝の予防

 

大関:まだ痛みが出ていないバレーボール選手が、膝の周りの痛みを出さず、少しでも長くプレーするために、予防法はありますか。しなやかだけど弱いというお話もありましたので、その辺りを強化するなどでしょうか。

 

宗田:軟部組織の強化は難しいと思います。ですからやはり、バランスよく使えるような足底板の治療を早めにするなどです。膝蓋腱炎に関わらず、痛みの出る人は、力学的な負荷とクッション性を担保することが、予防としても治療としてもいいと思います。

 

あとは素質なんですよね(笑)。素質の要素がかなり大きいと思います。やはりなんでもそうですが、早めに治療して断裂という方向にいかないようにすることは非常に大事で、そのためには中高生のときにきちんとケアをする。男子バレーボール選手の例では、膝蓋腱が前方まで剥がれてしまっているような状況の選手を診たことがあります。今はまだプレーできていますが、その状況から考えると、この先、永くハイレベルで選手を続けていくのは厳しいのではないかと思います。

 

 

宗田 大(むねた・たけし)
1979年東京医科歯科大学医学部卒業。同年東京医科歯科大学整形外科学講座入局(研修医)。1990年米国ミネソタ大学整形外科学教室留学(リサーチフェロー)、1993年東京医科歯科大学整形外科講師、2000年より東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科運動器外科学教授、東京医科歯科大学医学部付属病院 整形外科。東レアローズ男子バレーボールチームのチームドクター。主な著書として「ひざ痛が消える痛点ストレッチ」(ビタミン文庫、2002年)「ひざ・股関節の痛みをとる安心読本」(主婦と生活社、2008年)、「膝痛 知る診る治す」(メジカルビュー社、2007年)、「復帰をめざすスポーツ整形外科」(メジカルビュー社、2011年)、「痛みとりストレッチ」(青春出版社、2011年)

 

 

スポーツ医学検定

スポーツ医学検定とは、一般の人を対象にした、身体のことやスポーツによるケガの知識を問う検定です。本検定で得られた知識を、①ケガの予防 ②ケガからの競技復帰 ③競技力の向上に活かせます。
【各級の目安】
■ 3級(ベーシック):身体やスポーツのケガの最も基本的な知識が問われます。スポーツ医学に初めて触れる人は、ここから目指しましょう。(こんな方におすすめ:スポーツ選手自身、成長期の選手の保護者、部活のマネージャー)
■ 2級(アドバンス):身体やスポーツのケガのより詳しくより広い知識が問われます。スポーツを指導する人はここを目指しましょう。(こんな方におすすめ:スポーツ指導者、部活の顧問、スポーツ系/体育系の学生)
■ 1級(マスター):身体やスポーツのケガの専門的な知識が問われます。スポーツメディカルに関わる人はここを目指しましょう。(こんな方におすすめ:スポーツメディカルに関わる人・関わりたいと思っている人)

*初級(ビギナー):ウェブで受検できるスポーツ医学Web検定(初級)では、3級相当の問題が出題されます。トライアルにどうぞ。
スポーツ医学検定公式テキストはこちらへ

 

 

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